11/15〜19 Illimani traverse

今までそれなりに山は登ってきたつもりだったけど、本当に山は舐めちゃいけない。
そう思えた5日間だった。

ボリビア・ラパスではおそらく最後の登山。
イリマニはラパスの街からも存在感のある、おそらく誰もが憧れる山。
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よくツアーでは一番高いpico surだけ登る2泊3日のものがあるけど、ワイナポトシ、コンドリリとお世話になったガイドのイリネオがイリマニの縦走は6000メートルで2泊もテントで寝れるし本当にいいから!ってことである意味騙され5泊6日でイリマニの縦走をすることになった。


◎1日目
朝4時に宿の前にパブリックバスが迎えに来るということで真っ暗な中待つこと1時間。
バスはこないんじゃないかと思った時、やっとバスが来た。
その1時間、ガラの悪い酔っ払いの若者が前を沢山通り過ぎていく。
誰でも気にせずそこら中で立ちションしてて、夜のラパスは恐ろしいと思った。
途中イリネオも乗ってきてとりあえず一安心。

バスに揺られること3時間。
登山口の村、ピナヤ到着直前に雨で車が進まなくなった。
乗客皆んなでロープで引っ張るが動かない。
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仕方なく雨が降る中歩いてピナヤまで行くことになった。約40分。
ピナヤに着くとどこに行くのかと思うとイリネオの実家だった。
お父さんもお母さんもすごく温かい方だった。
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少し休み、雨が止むのを待った。
そして出発。
重い荷物はドンキーが持ってくれるから、水とか軽いものだけ持って歩いた。
雨は止んでたけどちょっと曇ってる。
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ちっちゃいお花がいっぱいあって可愛かった。
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2時間か3時間くらい歩いてるとパッと視界が明るくなった。
ふと見上げると、山だ!すごい!
氷河が大きく見える!
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明日はあそこを登るからね、ってイリネオ。
そーなん!あんなとこ登るん??!
とりあえずあと少しで今日のテン場。
途中犬やリャマの死骸もあった。
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ワイナポトシを登った時に知った高山病に効果があるっていうパパス?パポス?も生えてた。
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テン場に着くと雪!最悪や〜
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とか言っていたらすぐやんで晴れた!よかった!
荷物を運んでくれたポーターのお父さんとドンキーはここでさよなら。
荷物を全部外に出して干した。テントも張って完璧。
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炊事に使う水を汲みに行くから一緒に行こう、とのことで氷河へ。
イリネオが突然止まって、水の音がする。って。
確かにする。
ここ掘れワンワン状態でひたすら岩をめくった。
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そしたら本当に下に水が流れてた。すごい!こうやって水汲むんやなあ〜
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初日はゆっくり過ごして夕食食べて少しラパスの夜景を楽しんで就寝した。
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◎2日目
試練はこの日から始まった。
朝6時頃起床し7時頃から動き始めた。
行動開始すぐにアイスクライミングが始まった。
この時はまだ何も知らなかった。
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下から見ている分にはそんな距離も感じられないが登り始めたら本当に前に進まない。
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この氷河一体何メートルあるの?
そして予想以上に長く急勾配。
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一歩間違って足を滑らせると死ねる斜度。滑ったら何百メートルも滑り落ちることになる。
下を見ると怖いからずっと上を見ていた。
氷河の上部まであと一息!ってところで、イリネオの動きが止まった。
どうも危険で難易度が高い箇所なため前に進めないらしい。
私たちはイリネオが進んでくれなければ前進できない。
ひたすら応援し続けた。『ガンバ!イリネオ、ガンバ!』
1時間近くイリネオは闘い続けた。そして、私たちは決して滑らないように、待ち続けた。
もし、このピッケルを離したら、アイゼンが外れたら、きっと一番下まで真っ逆さまに落ちていただろう。
動いていれば暑いが、じっとし続けるのには寒すぎた。
動くのは怖いから、大きな声を出して気を奮い立たせ続けた。
そして少しずつイリネオも前に進んだ。
やっとの事で前に進むことができた。
私たちは先に進んだイリネオがロープを引っ張ってくれているから、手こずったものの登ることができた。
7時間か8時間近くアイスクライミングをしていた。
標高差は約500メートル。本当にきつかった。
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一休みしてから、今日のテン場はもう少し上だから登るよ、って。
まじか、ここでもテント張れそうやのに…
でも、天気良くて景色も最高!
この日差しはやばいし、サングラスでもしようかな。
ヘルメット、この先いる場所ある?ってイリネオに聞いたらどっちでもいいよ、って。
暑いから外そうかな。
少し歩くと雪は終わり岩場になった。
アイゼンを外しプラスチックブーツで登るとのこと。
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でも、これを越えたらテン場があるらしい、ガンバだ!
先に登っていたイリネオが上でなんか喋ってる。
『あっ!』
その瞬間に15メートル程上にいたイリネオがバランスを崩し、近くにあった岩が落ちてきた。
2人に直撃。森さんの肩と私の頭に直撃した。
ビックリして一瞬時が止まった。
でも、特に何もなかったからそのまま登り続けた。
何でさっきヘルメット外したんや、ほんまに。
岩に登る時点で付けないといけないことに気付かなければいけなかった。
そして、恐怖のロッククライミングを終えこの日のテン場に到着した。
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テントを張って帽子を脱いで確認してみたら私の頭が切れていた。
帽子にも血がいっぱい付いていた。
髪の毛を手ですかしてみると、ごそっと髪の毛が抜けた。
一瞬何が起きたのかわからなかった。怖かった。
石が落ちてきたときに石の角で帽子、髪の毛、頭の表皮が切れていたのだ。
イリネオに診てもらったら、問題ないという。本当に?
とりあえず到着も遅かったのですぐにご飯をイリネオが作ってくれた。
すると、森さんが目が痛くて開けられないという。
イリネオ曰く太陽のせいだという。明日になれば治るから、ということで就寝した。
しかし、夜中私も目が痛くて目が覚めた。2人とも何度もうなされた。時計のライトさえ目が痛くなる。
光を失うことがあんなに恐怖だとは思わなかった。
何も見えなかったし、本当に目が開けられない。すごく怖かった。
隣のテントでイリネオも唸っているのが聞こえる。
とりあえず、なんとか寝られるだけ寝た。

◎3日目
朝になったが、全く目が開けられない。
1秒開けては10秒閉じて唸る、の繰り返しだった。
太陽の光が目に突き刺さる。
まぶたの裏で何百もの針がチクチク白目を刺している感じだった。
目が痛いことで生活の質がこんなにも下がることを思い知った。
しかし、それでもイリネオは出発すると言う。
どう考えても無理やろー!
ちょっと休ませて、って言ってお昼前まで3人とも寝ていた。
というか、目が開けられないから寝るしかなかった。
何度も今日はもう1日ここでテント張ろうって言っているのに、イリネオは聞き入れてくれなくて、結局前に進むことになった。
そして、ほぼ前の見えない状態でpico norteまで登った。登れた。
目が痛すぎて何度も唸りながら登った。
アイスクライミングもあった。本当に恐怖でしかなかった。
目の前しか見えていなかったから、景色も何も覚えていないし、というか見えていないし、誰も写真を撮る元気さえないから、この日歩いた記憶はほぼない。
夕日とともにpico norteに到着した。
私の目は10秒くらいは連続で開けられるようになっていた。
イリネオもだいぶマシになっていたみたいだが、森さんはまだあまり回復していないしここに来てまた高山病になっていた。何度か嘔吐もしていたしご飯も食べられていなかった。
辛い1日だった。
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◎4日目
目はだいぶマシになったが、徐々に疲労も溜まってきた。
8時くらいに歩き始めた。
もう、いつ何があったかほとんど覚えていないが、『トラバース(横切る)だけだから大丈夫』ってイリネオが言ってたのは覚えている。
やのに、やたら登らされた記憶だけはある。
あと、朝軽くご飯を食べたあとに動いたからか、途中で便意が襲ってきた。
でも、どう考えてもトイレができるようなところはない。
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『イリネオ!バニョ!(トイレ)爆発する!』
何とか耐えて、少し広いところに来た。
『危ないからそこでして』
って言われたのは2人から数メートルくらいしか離れてないところ。
まじか!こんな屈辱は生まれて初めてや…
でも、お腹が痛すぎたので『Don't look me!!!!』って言って『あーあーあーあー』って大声で喋りながらそこで排出した。
めっちゃスッキリ!絶景!素晴らしかった。
排便後にイリネオが写真撮ってくれた。笑
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紙はちゃんと持ち帰りました。
その後もろくにご飯も食べないまま歩き続けた。登り続けた。
アイスクライミングも何箇所かあった。
日も暮れかけた頃、急に景色が変わった。まさか!私が2メートルほど滑落した。
確保のロープがあったからこそ助かったものの、本当に一瞬死んだと思った。
初めての経験だった。
雪庇が危ないのは分かってたけど、あんな簡単にも落ちてしまうなんて本当に危険だ。
滑落した場所は雪がたくさんある場所だったので怪我もなく済んだ。
その日は目的地まで辿り着くことができなかった為、突風の中テントを設営した。吹き飛ばされるかと思った。
この日のテン場はpico parisの麓。だったと思う。

◎5日目
また朝が来た。毎日が終わりのない永遠のように感じる。
毎日の疲労がピークに達してきた。
一つ一つの行動にすごく労力を必要とする。
靴を履くのも、アイゼンを付けるのも、カバンを背負うのも、こんなにエネルギーがいるんや。
それとは裏腹に天気は出発した日の雪を除けば、毎日快晴。
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そして、縦走のくせにここにまで来てもまだアイスクライミングがある。
本当に辛かった。叫びながら登った。
連日使っている手袋はもはや乾くこともなくずっと凍っている。
次第に手の感覚がなくなり痛くて痛くてどうしようもなくなった。
手が痛すぎて叫び回った。本当に痛かった。
イリネオが私の氷のような手を直に服の中に入れてくれて温めてくれた。
イリネオもすごく辛そうにしていた。
何とか感覚も戻ったが、本当に凍傷になりかけていたんじゃないかと思う。イリネオ、ありがとう。
(イリネオのおっぱい触ってしまった)
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もうすぐ、pico surだ!向こうに見えてる丘が最終目的地、pico sur 6439m。
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先を見るとしんどくなるから目の前の一歩だけに集中した。
20歩歩いては休憩した。
そうして、何とか最終目的地のpico surに辿り着いた。
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長かった。本当に長すぎた。
もう、終わりなんか来ないんじゃないかとさえ思えた。
頂上からの景色はきっと素晴らしかったんだろう。
しかし、足もフラフラ、お腹の調子も最悪の私には景色を楽しむほどの余裕はなかった。(この日もお腹の調子悪くて、計4回も絶景の中で出してしまった。)
帰ってきて写真を見て、あんな所にいたんだと驚いた。
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本当に素晴らしい景色ばかりだった。
下山はもう本当に全然力が入らなかった。
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(ロープを使って懸垂下降みたいにしておりた)
何とかハイキャンプに着いた時には涙が止まらなかった。
イリネオのお父さん(ポーター)がジャガイモと卵を用意して、笑顔で待っていてくれた。
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あんな美味しいジャガイモは食べたことがなかった。
美味しくて苦しくて嬉しくて、泣きながら食べた。
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(コーラとイリマニと号泣中の私)
そして、私たちの試練は終わった。
ハイキャンプから麓の村ピナヤまでは普通のトレッキングだった。
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ベースキャンプは緑がすごくキレイで山も近くて、みずみずしい素敵なキャンプ場だった。
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夜8時、やっとピナヤに着いた。
その日はイリネオの家で休ませてもらった。
次の日の朝のバスでラパスまで戻った。
ピナヤは大屋にすごく似ていた。
土の匂い、緑の鮮やかさ、ゆったりとした時間の流れ、とても素敵な村で住みたいとさえ思えた。
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大好きで大好きで仕方なかったはずの山が、本当に怖かった。苦しかった。
山は決して舐めてはいけない。
何度自分の限界を超えたかわからない。
山は美しくて偉大で、私の憧れを沢山持っている。
しかし、絶対自分の体力、気力、技術超える山には登ってはいけないと思った。本当に死ねる。
きっと、始めたら投げ出すことは出来なかったんだと思うけど、何度もラパスに、日本に帰りたいと思った。
しかし今回もまた一歩でも前に進めば必ず最後は辿り着けることを教えてくれた。
不可能なんてあり得ない。
辛く長い5日間だったけど、私の人生で必ず大切な糧になってくれるはず。今ならそう思える。
幸せであることを感じるのはそう難しくないのかもしれない。
日々の生活がこんなにも幸せなのに、ここまで苦しい思いをしないと気付けない私は本当に馬鹿だと思う。
とりあえず、しばらくは雪山はいいかな〜
とか言って、また直ぐに登ってそうな自分がいるのもまた嫌だな。
命は大切。今回は本当に死ねる場面がいっぱいありすぎた。
大切な命を今日も一生懸命に生きようと思う。

※頭の傷は病院に行ったら異常なしとのことでした。
よかった。(ラパスで病院2回目。抗生物質2回目。)

I went to Mt.Illimani traverse for 5days.
The mountain is so beautiful but horrible.
I felt like that I was dying.
The mountain tells me how happy my life is.
I can't forget this experience.And it will be my treasure forever.
Thank you for guiding us, Irineo.

Impossible is nothing!